フランスの菜園、ポタジェ

2021/08/18

皆さま、フランスからボンジュール!

日本ではコロナ禍における「巣ごもり」で、家庭菜園をする人が増えているとのこと。フランスでも、これまで三度のロックダウンで巣ごもりを強制化された中、日本と同じようにいかに家で楽しく過ごすか、ということで昨年から園芸が大ブームです。
そこで、今回はフランスの家庭菜園についてご紹介します。
植え

フランス語で家庭菜園は、Potager(ポタジェ)と言います。
基本的には野菜を育てることが目的なので、日本のそれとは変わりありません。
自宅の庭やベランダで野菜を育てたり、都会では自治体が貸出ている市民農園などの共有スペースで畑を作ります。パリやパリ近郊で畑のイメージはしにくいかもしれませんが、環境問題に積極的に取り組むフランスでは緑地化の狙いもあって、市民農園はもともと盛んで、申込倍率も高く大人気です。

そういったフランス人たちの家庭菜園をのぞいてみると、野菜と一緒に色とりどりのお花が彩りよく咲いているのを見かけます。
はたまた、畑自体が四角い木枠で区画されていて、きれいにバランスよく配置されていたり。雑然とした畑という感じではなく、とにかく見た目が良いのです。
畑

わかりやすい例をあげると、あの有名なヴェルサイユ宮殿にも、立派なPotager(ポタジェ)が存在します。おそらくここは世界でもっとも有名な菜園なのではないでしょうか。
ルイ14世の命によって作られた菜園で、「Potager du roi(王の菜園)」と呼ばれています。9ヘクタールもある敷地は左右対称のシンメトリーで、とにかく美しい。

そう、これがPotager(ポタジェ)の原点。
実用と観賞を兼ね備えているのです。

注)ヴェルサイユ宮殿へお越しの際はこの菜園も見学できますし、実際にこの菜園で育てられた野菜や果物、ジャムなどを売店で購入することもできます。

フランスのPotager(ポタジェ)の美しさは、フランス庭園の基本となるシンメトリーや幾何学模様といった構成がベースとなり、そこにパーマカルチャーという概念が混ざりこんで成り立っているのです。
畑

パーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)、農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組み合わせた造語で、現在では永続可能な循環型の農業をもとに人と自然がともに豊かになるような関係性を築いていくためのデザイン手法を意味します。これだけ聞くと難しそうな単語に聞こえますが、簡単に言うと自然の生態系で成り立つエコシステムを縮図にしたもの。この概念を庭の小さなPotager(ポタジェ)スペースで形成します。
ミツバチ

まず、土づくりの肥料には、生ごみや芝刈をした際に出た芝・落ち葉を堆肥化させたものを使用。コンポストはパリ市内にも市民が利用できるBOXがあちこちに設置されていたり、市民農園内に設置されていたりします。これで自宅のゴミも軽減して、畑に還元できます。
コンポスト

そして、苗を植える際にはしっかりとプランを立てます。
お花と野菜を組み合わせて、見た目もきれいな畑を作ることをイメージします。
どんなお花でも良いわけではありません。野菜の苗と花の相性が優先です。
いわゆる昔ながらの農法、コンパニオンプランツです。
コンパニオンプランツとは、相性の良い野菜同士や野菜と花・ハーブを一緒に育てることで、病害虫を抑えたり、お互いの生育に良い影響を与える組み合わせのこと。
例えば最も使われる花は、マリーゴールドやカレンデュラ。これらの花の苗を、相性の良い野菜の苗の隣に植えてあげるだけで野菜を病気から守ります。そして何より、畑にも彩りを与えてくれ、ハチやテントウムシなどの昆虫を畑内に集め、野菜の受粉を助け、害虫駆除をしてくれます。
マリーゴールド

そうしてできた野菜を収穫する、このPotager(ポタジェ)の一連の流れが自然界の縮図となっています。そして、その畑自体の見た目も華やかさを求めることで、実用性と観賞性を高めます。
それがフランス流の家庭菜園、Potager(ポタジェ)なのです。
ポタジェ

今の季節はこうして手間と愛情をかけて育てた夏野菜が、収穫最盛期。
自分で育てた野菜を収穫して食べる喜びと言ったら、やはり格別です。

家庭菜園にチャレンジしようと考えている方は、ぜひフランス流家庭菜園・Potager(ポタジェ)を取り入れてみてください。
ポタジェ