若者への伝言

2021/07/07

積乱雲が次々と発生し、各地に警報級の大雨を降らせています。

今年の前線や気団の動きは予想するのが難しく、気象予報士の涙雨も入り混
じるこの頃です。この悩ましさは天候ばかりではありません。現代の世相に
よく似ています。

世界を震撼させたパンデミックの長期化により、日本経済への打撃は深刻化
しています。私たちの生活不安や社会への不満は日ごと高まり、経済格差も
K字のごとく拡大を続け、人々の緊張感は政治不信へと走っています。
いったい、社会はどこへ向かうのでしょう?
暗雲がただよう事態に多くの人々が新たな道を模索しています。でも確かな
道筋を説く人は、誰一人いません。
この難局を打開するには、今までの偏重した知識や技術の常識とされる既成
観念では、答えを導き出すことは出来ません。従来の方程式では解き明かせ
ない複雑な課題が折り重なっているからです。
柔らかな心と豊かな感性で、新しい常識を創り出す時代が訪れています。
この強い意志こそが、いつの時代にも世の中を動かしてきました。

若者たち

現代のような危機の時には、いにしえの史実に心を運ぶことを勧めます。
自然災害や飢餓、疫病などさまざまな危機の時に、先人はどのように苦難な
日々を乗り越えてきたのでしょう?
その軌跡には実に豊かな知恵が宿っています。とは言っても歴史はたやすく
答えを教えてくれません。でも克服への確かな道を提示し、私たちを新天地
へと導いてくれます。
古来、茶人は芸道の教えの一つに「陰陽和合」の心得を説いています。
陰と陽。つまり月と太陽、女と男、衰退と繁栄、貧者と富者などの二分法か
ら意識をニュートラルにし、二極のいずれか一方にこだわることで心を悩ま
すべきではないという中庸心の教えです。
もろもろの悩みや迷いの渦中にある時は、どちらが正しく誤りかの二者択一
は成立しません。環境や情況が変われば、おのずと選択肢は多岐にわたり、
二択などありえません。そのような時にこそ、視野を広げて第3、第4の
選択肢に考えを巡らすのです。

大海

海図なき航海に出港するには、心の内なるざわめきを鎮め『夢』を立体的に
描くことが必要となります。
夢は計画を創り上げ、その計画は勇猛果敢な行動をもたらし、その行動は明
るい未来へと道を切り開きます。この小さな夢の波は、新たな波を次から次
へと生み出し、大海へと夢を広げていきます。
決して夢を枯らしてはなりません。かつてペスト終息後にルネサンスが誕生
したように、私たちは既成観念を超えて新たな大海原に飛び出すのです。
やがて、社会の雨もあがり、青空には美しい虹が迎えてくれます。