フランス人の美食探求心の原点について考える

2021/05/17

皆さま、フランスからボンジュール!

フランスは、グルメな国というイメージをお持ちの方が多くいらっしゃると思います。そんなフランスのグルメの根源について考察してみました。

洗練されたフランス料理は、フランス人の持つ<芸術的センス>と<美味しいものに対する探究心>で成り立っていると私は思っています。

<芸術的センス>については、幼少期から身近に美術館や歴史建造物があり、芸術に触れる機会が多いことで磨かれていくのだと思うのですが、<美味しいものに対する探究心>の原点はフランス人の生活から垣間見られます。

例えば、マルシェ。
山積みの新鮮野菜が包装なく土付きで並んでいたり、ウサギや鶏がそのまま1頭ずつスタンド脇にぶら下げられていたり。日本では綺麗にパッケージされた野菜や肉魚がスーパーに陳列されているので、食べ物の出処や原型がイメージしづらい環境ですが、フランスのこういったマルシェでの光景を見ると、知らず知らずに日常の中で食育を受けて育ち、美味しいものが何かを学んでいるのだろうと感じます。
マルシェ

また、<美味しいものに対する探究心>の原形に当たるのかなと感じるのは、自分で美味しい食材を探すという行為。
散歩中に栗やクルミの木があれば喜んで拾い、あるいは気合いを入れて完全装備で”今日はキノコ狩りに出かける”という人も多くいます。
日本にいた時は落ちている木の実やキノコは拾ってはいけないもの(土地所有者の許可や衛生観念から)という考えでしたが、フランスでは積極的です。もちろんフランスでも私有地では問題になることもあるので、散歩道やジョギングコースが設けられている国有林などで行いますが、パリからでも電車で15分も揺られれば、こういった場所はたくさんあります。
小道

今の季節なら、Morille(モリーユ茸)狩りを楽しむ人が多くいます。日本名はアミガサダケ。キノコにしては珍しく春、4月から5月の短い期間にしか現れない貴重なキノコ。ヨーロッパでは、セップ茸やジロール茸に並んで有名な高級キノコです。
フレッシュなモリーユ茸は一般市場に出回ることが少なく、だいたい50-60ユーロ/KG、乾燥は500ユーロ/KGほどで出回っており、スーパーでは乾燥のモリーユ茸を瓶に詰めたものが売っています。
モリーユ茸

私は、森の中でキノコを見つける自信がないので、これまでキノコ狩りをする機会がなかったのですが、先日散歩コースでたまたまモリーユ茸を発見しました。明らかに見た目はモリーユ茸、でもやっぱり本当に食べられるのか、キノコは怖いのでご近所の達人に確認してもらい、モリーユ茸のお墨付きを頂きました。

私はご近所さんに見て頂きましたが、フランスではキノコ狩りで採ったキノコを薬局の薬剤師さんに食べられるかどうか判別してもらう習慣があります。薬剤師さんは真菌学の学位を取得しているので判別できるんだそう。これなら確かに安心してキノコ狩りが楽しめますし、キノコ狩りの文化が普及しているのも納得です。

こういったマルシェでの光景や味覚狩りの体験が<美味しいものに対する探究心>を育んでいるのだろうと思います。フランスのグルメの根源、ご納得いただけましたでしょうか?