森林と心身と教育

2021/05/06

「森に接すると、人々の心が安定する」事は以前から言われているが、かつてフィトンチッドと言われていた森の中を漂う清涼な空気は、樹々が自らを守るために放出する化学物質だと言う事がわかって来た。その成分は森の樹木が発生させる芳香成分(アロマ)で、そのアロマ成分が人々の精神を安定させる役目がある事も実証されている。
ところがそれで、国も『森林サービス産業』に力を入れて、国民の心身の予防医療方面に予算を割き始めた。
ところが最近、学校の先生方の心の健康にかなりの赤信号が灯りつつある。パワハラ・セクハラによる不祥事が続出し、精神の不安定からの休職、退職、時に自死 と言う事件も起きている。
これを、防ぐには加害者への処罰の強化も必要だが、予防処置も重要だ。2つの重要な視点が必要だと思われる。 
1つは、教育環境が大きく変わり、先生達が大学で過去に教わった常識『ラプラスの悪魔』=『現場分析からの未来決定』のドグマが崩壊して(拙著『脳と森から学ぶ日本の未来』に詳述)、現代には通用しない事を良く認識する事が先ず第一歩だ。その上で、現代が『コロナ禍』にあって人間社会の一大変革期にある事、を認識しなくてはいけない。そして、ICT教育のノウハウをしっかりと体得して、オンラインで世界中の優秀なソフトを導入し、仕事量を減らす事が、重要だ。ICT教育が浸透すると、先生は役者から監督に変わり、いちいちセリフを覚える必要が無くなり、仕事が半減する。また同時に、生徒の自主性が育つ。スポーツの部活も、生徒の自主性を育てる事が一番大切な事で、暴力で脅すなども時代遅れも甚だしい。
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もう一つ大切なのは、『ふるさと教育』や『自然教育』の(地域の人を巻き込んだ)充実だ。中でも日本は自然が豊かで自然教育のフィールドに事欠かない。森林も多いし清流が多くその美しさは、世界でも類を見ないし、森林面積率は先進国でフィンランドやスウェーデンに次いで3位である。さらに言えば、北欧の森林が針葉樹ばかりなのに比べたら、落葉広葉樹もあり常緑広葉樹もあり、日本は北欧に比べたら圧倒的に森林生態系は豊かである。理科教育や環境教育やSDGs教育は、森の中で実施するのが良い。私は、ICT 教育の充実にも増して『自然教育』が大切だと思っている。
何故なら、『自然教育』に力を入れる事で、生徒も精神の安定に向かうが、先生の心の病への見えない所での予防になるからだ。幸か不幸か日本人の遺伝子は縄文時代から殆ど変わっていない。いや,人類全体もホモ・サピエンスになってから殆ど変わっていない。C・W・ニコルさんも言っていたが、生徒も先生も『自然欠乏症候群』で、それを補う事で、先生達の不祥事の予防に結びつくし、生徒達も『想定外の事態への対応力』の向上に結びつくと言える。