2024年サマータイム到来

2024/03/29

皆さま、フランスからボンジュール!

日本もフランスも桜の季節となりました。
桜の季節、というと新生活の始まり。出会いと別れの季節ですね。
こちらフランスにいると入学式・卒業式・入社式・花見などのかしこまった行事がないので、季節ごとの心の切り替えをするのが難しく、ただ淡々と一年が流れていってしまいます。
日本のその季節感は、とても素晴らしい文化だったなと実感しています。
その時の季節や咲いている花、景色や香りで、その時々の思い出が五感をたどって鮮明に蘇るのはしっかりと心の区切りをつけるということを行事化しているからこそだと思います。

城

かしこまった季節行事などが基本的に存在しないフランスでは心の区切りをつけることに曖昧で残念だなと感じる一方で、日本では感じられない季節の移り変わりを感じる機会があることに気が付きました。それはサマータイムの到来です。

とけい

ご存知のようにヨーロッパにはサマータイムが導入されています。
今年も3月最終週に冬時間から夏時間に切り替わります。
日が伸びて、気持ちが晴れやかになりウキウキします。
行事とは違えど、これも一つの季節を感じる文化ではないかと思います。

3月の最終日曜日、今年は30日から31日にかけての午前2時に時計の針が一時間進み、午前3時となります。
この時間に起きている人は少ないので、31日に起床したら家中の時計を一時間進める設定をして時間が変わったことを実感します。
今はスマホが自動的にサマータイムに変えてくれるので安心ですが、昔は目覚まし時計の時間の切替えを忘れてしまい待ち合わせ時間に一時間遅刻する、なんて話しもよく耳にしたものです。

3月の夏時間に切り替わる際は実質24時間のうち1時間損をします。逆に、10月の冬時間に切り替わる際は1時間長くなり得になります。
日本との時差は夏時間は7時間、冬時間は8時間と変わります。
(イメージは仏政府が時間の切り替えを注意喚起するための広告)

こうこく

フランスで初めてサマータイムが導入されたのは第一次世界大戦中の1917年、そして一時廃止された後に1975年にオイルショックの影響で再導入されたそうです。

て

サマータイムが始まったきっかけは戦争。戦争中の厳しいエネルギー事情から夜間照明によるエネルギー消費を抑える省エネ目的で、さらに夏季の長い日照時間を活用し、人々の活動時間の活性化や犯罪の抑制に効果があるとして導入されたそう。
日本は緯度の都合上、あまり夏季と冬季で日照時間に差がないので効果は低いですが、ヨーロッパなどの高緯度の地域では、夏季は早朝から夜22時頃まで明るく、日がとても長いのでサマータイムのアイデアが生まれたのも理解できます。

しかし実際には、見込まれていたほど省エネ効果は高くないようで、加えて時間を切り替えることにより健康に悪影響を及ぼすということで、2019年に正式にEU欧州連合が2021年にサマータイムを廃止する案を採決しました。しかし、2020年にコロナ禍に突入しサマータイムの廃止に動くための足並みをEU全体で揃える余裕がなくなり、そのままうやむやになっているのが現状です。
各国に夏時間を維持するのか、冬時間を維持するのかの選択肢があるため、EU全体で細かい調整が必要になりますが、一体いつ廃止となるのか見通しが立っていません。

はた

確かにたったの一時間と思われるかもしれませんが、毎年二回1時間の切替えの後は時差ぼけが発生し、身体が新しい時間に慣れるまで1週間ほどかかります。
実際体内時計が狂うことで睡眠不足・睡眠障害のリスク、 急性心筋梗塞の発生率を高めるなど、健康上の問題を与えるリスクが高まるというのです。
また赤ちゃんがいるご家庭だと、もっと大変。赤ちゃんは体内時計のリズムが繊細ですから、時間の切替えによって睡眠リズムが崩れ、ぐずったり寝れなくなったりすることが増えます。

あか

なんにせよ、サマータイムは待ち遠しかった春夏の到来を実感する嬉しい機会。
サマータイム制度がなくなると体への悪影響が減るのかなと思いながらも、季節感を感じられる機会がひとつなくなってしまう、という寂しい気持ちもあります。
EUのサマータイム制度のこれからにも注目しつつ、これからの太陽の季節、目一杯に日光をチャージしたいと思います。

公園